
一言で興味を引くようなオススメの言葉が見つからないけど、「いい映画だった」と余韻に浸りたい人は観るべき。
特に年末年始の休み期間にはピッタリの長編映画です。
とはいえ、構成が複雑なので、何の予備知識も無しに観ると、一体どこに焦点を置いて観たら良いのか分からず、表面上のストーリーにハマらなかった人は「長い時間を無駄にした」と思う人もいるかもしれません。なんせ3時間以上ありますからね。
実際に僕も、1回目は事前知識全くどこに焦点を置いて観たら良いのか分からずオヨオヨしながら観終わって(それでも分かる範囲で感動したけど)、作品のテーマと繋がりが分かってからもう一度観なおして感動しました。それで完全に理解できたと胸を張って言うことはできませんが。
その壮大な”テーマ”と複雑な”仕掛け”があるので「何度も繰り返し観て楽しむ作品」だと思います。
この映画を1度目で理解できた人は天才なんじゃないですかね?
※ネタバレあり
ストーリー
複数の物語が時間を越えて、ランダムかつシーンをシンクロさせながら進行していく。隻眼の老人ザックリー(トム・ハンクス)が、自身の時空を超えた数奇な物語を語るところから始まる。
引用元:Wikipedia
何のこっちゃ分からんでしょ?笑
それだけストーリー自体も説明しづらいっていう。
様々な時代が同時展開される”罠”
クラウド アトラスという作品は、過去から未来まで様々な時代(6つの時代)が同時展開されていきます。
こういう幾つかのストーリーが同時展開していく構成の場合、観てる側は「どこでどうストーリーが繋がってくるんだ」と思いますよね、フツー。
各所で出てくる”伏線らしきもの”をどう回収するのかと。
でもね、それぞれの時代の話はストーリー上、とくに繋がってないんですよ!!
は??ってなるでしょ??
でも、そうなんです。
別に違う時代に黒幕がいるわけじゃないですし、時代の違う人間同士が出会うわけでも無いんです。
そうすると、観てる方からしたら「6つのオムニバス形式のドラマを観せられてるだけやんけ!!」となるでしょ?
まさに1回目の僕です 笑
実は壮大なスケールで繋がっている
でね、その”繋がっていない”1つ1つのオムニバス形式的なストーリーは、正直そこまで面白いもんじゃないんですよ。
(個人的には近未来のネオ・ソウル編だけは単体で観ても面白かったけど。)
でも、繋がってないようで実はもっと壮大なスケールで繋がってたんです。
それが【輪廻転生】。
完璧ではありませんが、上記のような感じで、同じ役者が何役も演じてます。
(「同じ役者が出てるから、転生してることに察しがつくやろ!」という声も聞こえてきそうですが、そもそも役者について詳しくないですし、もともと外国の人の顔の見分けがつかないのにメイクまでされてたら判別できません 笑。トム・ハンクスだけギリで分かるレベル 笑)
テーマが分かると見え方が全然違う面白さ
それぞれの時代を【輪廻転生】した人物に注目してみていくと、あら不思議。
何も意識せずに観てた時の”伏線らしきもの”が、それぞれ意味を持ってくるんですよね。
つまり、この映画は『それぞれの時代のストーリーに注目して観る』というより、『それぞれの人物がその時代でどんな行動・生き方をしているのか観る』映画なんですよ。
各時代に囚われるとサッパリ面白さが伝わらないと思います。
表面上しか見えてなかった!と思わされた映画
1回目で理解できた人ってかなり理解力高いと思うんですよ。
僕なんか、1回目観て「なんか感動したわー」って思ったけど、実際のところ「ネオ・ソウル編」単体の感想でしか無かったわけですし。
2回目観たら、明らかに【輪廻転生】をテーマとしたキーワードがバンバン出てました 笑
命は自分のものではない。子宮から墓まで、人は他者とつながる。
過去も現在も、すべての罪が、あらゆる善意が未来を作る。
不滅の魂の本質は我々の言葉や行いによって決定され、そしてその因果の中で我々は永遠に生き続ける
愛は存在すると信じている、ある種の自然現象として。愛というものは死をも乗り越える
死はただの扉に過ぎません.閉じた次の扉が開く。
人間はなぜ同じことを繰り返すのだろう
・・・改めて、自分の理解力の無さに驚きますよね。どんだけ雰囲気で観てたんや、と。
とはいえ、2回観てまだ完全に理解できてないと思います。
まぁそういう意味でも、何度観ても楽しめるし、3時間超えの大作とはいえ「長い!!」とは全く思わないです。
トム・ハンクスにみる、クラウド アトラスの輪廻転生
※仏教に詳しくないからちょっと勉強しました 笑
一般的な【輪廻転生】というと、死ぬまでに造った行いによって次に生まれる世界が決まるという”因果の道理”に基づくらしいです。
「徳を積んだら、次の人生ええ事あるよ」ってことですね。
じゃあこの映画もそうなのか?というと、どうやらそう単純な話でもないらしい。
一番分かりやすい全ての時代に出てくるトム・ハンクスで見てみると、その中で彼の魂は”悪人”であったり”善人”であったりするわけです。
簡単に順番で言うと、時代順での彼の特徴は以下のような感じ
- 強欲な医師→金目当てに毒殺を企む(悪人)
- 安ホテルの支配人→金目当てに警察を騙す(悪人?)
- 原発事故を望む石油会社の従業員(うろ覚え)→会社を裏切る(善人)
- 傲慢で粗暴な小説家→殺人(悪人)
- 映画俳優(善人?)
- 心に弱い部分がある人間(善人)
個人的に(2)とかは実際のストーリーの中では、見方によれば良い人にも見えなくもなかったですが、一般的な感覚でいうと善悪半々くらいなのかな?
しかしまぁこうして見てみると、(3)〜(4)と(4)〜(5)の流れは、『善人から悪人』になっているので、どうやら因果の道理は適用されていないっぽいんですよね。
いや、(5)に関してはちょい役なんで最早善人かどうか分からないレベルなんですけど、それにしたって・・・悪人が良いことして善人になるのは考えられるんですけど、善人がいきなり悪人に生まれ変わるって事あるんでしょうか?
輪廻転生に西洋的な解釈があるのか?・・・うーん、何か理由があるはず。
ってか”因果”ってキーワード出てるしね。
僕の”因果”に対する理解が及んでいない可能性は十二分にありますけど、なんか釈然としない。
特定の人物(魂)との出会いで変わる?
単純に”個”として見れば、よく分からないクラウド アトラスの輪廻転生。
しかし、よくよく観ればトム・ハンクスが善人である時代は全部ハル・ベリーと出会ってるんですよね。※(5)はちょい役なので除外。
そして2つの時代とも、もともと悪人寄りのトム・ハンクスがハル・ベリーと出会うことによって善人になり、恋仲になっています。
ちなみにトムハンクスが殺人を犯す(4)の時代ではニアミスで出会っていません。
これをどうみるか、単純に”愛の力によって善行に傾く”と考えると、ちょっと嫌ですね、個人的に 笑
とにもかくにも(3)の時代のトムハンクスは、
我々の人生や選択は量子の軌跡のように瞬間ごとに意味づけられる
我々の人生が交差するその瞬間新たな方向性を指し示す
と言ってます。
『その時代に何をしたか?』ってよりも『誰に出会ったのか?』が次の運命を決定づけるのでしょうか?
過去・現在・未来は同時に存在している?

2回目のクラウドアトラスを観た時にまだ分からない事の1つとして、「未来の出来事が過去の人物に影響を与えている」シーンがあった。
その分かりやすい例が1931年の人物が2144年の夢から曲の着想を得たこと。
過去から未来なら分かるけど、未来から過去にに影響を与えるってどういう事よ?
そういえば、なんか「全ての時間は同時に存在している」って聞いたことある気がするけど・・・難しいからよくわかりませんが、僕たちが認識できるのは”今、現在”だけであって、”過去”というものは記憶にしか無い、という理由っぽい。
まぁそりゃ、1秒前は既に過去ですからね。
たしかに”時間”というのはハッキリ目に見えるものでは無いのに、当たり前のように私たちが共通認識として持っている不思議な”概念”ですよね。
なるほど・・・そう考えれば・・・
って納得できるかーい!!
それじゃあ、全然スッキリせえへん。
というか、ただでさえ複雑な輪廻転生に”ブロック宇宙論”だか何だか知らんが、ややこしいテーマを入れるとは思えん。
ただ、この映画において、時間が過去から未来へと一方的に流れているわけでは無い事はたしか。
クラウドってiCouldと同じ仕組み?

もう少し時間が『同時に存在している』という事に考えてみる。
1秒1秒の時間が同時に存在しているって考えると、それだけで頭爆発しそう 笑
でももうちょっと大きい単位で考える分かりそうな気もする。
時間じゃなくて時代が同時に存在してるっていう。(ってことは結局全ての瞬間が同時に存在してることになるけど)。
タイトルの「クラウド アトラス」に着目してみると、たとえば正にiCouldみたいなクラウド上に”記憶(=魂?)”があって、そこから各時代の人体に繋がっていると考えてみる。
そう考えると、全てが同時に存在している事もなんとなく分かるし、輪廻転生した人物が悪人か善人か?は置いといて、共通部分を感じるのも納得がいく。だって同じ魂ですし。
それぞれの時代に出会った人が違うから、同じ人間でも”善人”だったり”悪人”になるだけで。
善人からいきなり悪人に転生したわけではなく、同時に存在しているからそんなのは無関係と言えますし。
ただ、この説でいくと、気になるのは1849年の海岸に2321年の人喰い族のものらしき歯を思わせるシーンがあるってことなんですけどね。未来から過去という時間の流れは置いといて、繋がりがあるように思えますよね。
でも、そもそもこの考えだとあんまり『輪廻転生』の意味がない・・・というか、全部同時に存在してるなら厳密には『輪廻転生』してなくない?
流石に『同時に存在してて輪廻転生してない』ってのは無理があるか。
あともう一歩で綺麗に着地できそうやったのに・・・
わけわからんっ!!
転生っていうか、輪廻を表してるのかも

もうこの記事を書きながら考えていると、頭が相当疲れてきましたが、iCouldと同じ説が違うとすると「もしかして、生まれ変わりは輪廻転生を表してるんじゃなくて六道輪廻を表現してるんじゃね?」と思ってきました。
この作品では6つの時代が出てきますからね。
ちょっとトム・ハンクスに当て嵌めて考えてみます。
- 強欲な医師(地獄道)
- 安ホテルの支配人(餓鬼道)
- 原発事故を望む石油会社の従業員(畜生道)
- 傲慢で粗暴な小説家(修羅道)
- 映画俳優(人間道)
- 心に弱い部分がある人間(天道)
それぞれ簡単にいうと
『地獄道』は最底辺世界で、実際(1)の時代のトム・ハンクスは病人を心配しているフリをしながら毒殺を目論む最も卑しい人間として描かれています。
『餓鬼道』は欲望の塊の世界でだそうで、(2)の時代のトム・ハンクスはそこまで悪人として描かれていないものの、口止めで金品を要求しています。
『畜生道』は人を蹴落としてでも、自分だけ抜け出そうとする世界だそうで、人物としては悪人として描かれていないものの、(3)の時代のトム・ハンクスは、自らは悪徳な企業で働きながらも裏切る人物として描かれています。
『修羅道』は怒りに我を忘れ戦いを繰り返す世界だそうで、実際(4)の時代のトム・ハンクスは激情型の人間で、怒りに任せて殺人を犯しています。
『人間道』は過去世において、五戒(不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不飲酒)を犯した者が生まれる世界だそうで、私たちの住んでいる世界です。(5)の時代のトム・ハンクスは特に善人とも悪人とも描かれているわけではありません。
『天道』は六道の最上位の世界で、快楽に満ち、苦しみはないとされています。(6)のトム・ハンクスは心の弱い人間として描かれていますが、弱さに打ち勝ち、最終的には本当に宇宙船で地上を離れて平和な星に移りました 笑。なので、天道というよりは、人間道から天道へと至る過程が描かれていたのかな?と。
こうやって当て嵌めてみると、今のとこ一番それっぽくハマりました 笑
もういいや、疲れたよ。この考察。
また観た時に考えよ。
印象に残っているところ
やはりネオソウル編〜地球滅亡編にかけては色々考えさせられた人も多いんじゃないでしょうか?
個人的には、人類が作り上げた”ソンミ”というクローン少女を、最終的に神に祭り上げている人類に対して愚かさというか、業の深さを感じましたね。
やるせなさというか。
ソンミの言葉はフツーに心に響きました。その真意を理解するには僕の場合はあと10回くらい映画を観ないといけない気がしますけど 笑
(結論)映画の評価
この記事で一人であれやこれや結論の無い事をダラダラと書きましたけど、それぐらい映画を観終わった後も楽しめる作品です。
【輪廻転生】っていうとかなり宗教チックなイメージで敬遠する人もいるかもしれませんし、実際はそんなに「神様〜」っていうの無いです。
いい映画ですよ、ほんとに(完全に理解できてはないけど)
ちなみにクラウド アトラスの世界観を表現とした思われる曲貼っときます。これ好きなんですよね。編集の仕方もめっちゃいいし。
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