
なんとなく壮大なSF映画が観たくなったので、久しぶりにマトリックスを観てみました。
過去に観た事があった筈なのに「あれ?これってこんな話だっけ?」という部分や「こんなシーンあったっけ?」という事ばっかりだったので、初めてみる感覚で楽しめました 笑
以下、ストーリーの説明やら感想なんですが、理解の及んでいない(または間違っている)部分もあるかと思うのであしからず 笑
※ネタバレあり
「マトリックス」シリーズのストーリー
私たちが今暮らしている世界は実は仮想空間(=マトリックス)で、本当の現実では私たち1人1人は機械に繋がれているだけの眠った状態で生かされています。

既に人類は過去にAIに滅ぼされ、機械たちに栽培(管理)されています。人間が栽培されている理由は単純で、人間が生み出す熱エネルギーが機械の動力として必要だからです。
キアヌリーブス演じる主人公のNEOが仮想空間(マトリックス)から現実へと目覚め、救世主として世界を救う(マトリックス世界の住人を目覚めさせ、現実の世界に人々を解き放つ役割)までを描いた作品です。
テロと同じ思想
「人々を目覚めさせる」というのは聞こえは良いですが、その方法はテロと同じです。
現実世界では、NEOよりも早くに目覚めてAIと戦っている人々がいます。その中の一人がモーフィアス。

モーフィアスは「預言者」の言葉を信じており、その為には自分の命を賭けることも厭いません。しかし、この「預言者」を絶対的な存在して全員が崇拝しているかというと、そうでもなく、中には懐疑的な見方をしている人もいます。
とはいえ、彼を慕う者も多いのは事実で、後にNEOの恋人となるトリニティをはじめ、多くの”目覚めた”人間が抵抗勢力として現実世界で戦っています。
映画「マトリックス」の後半では、マトリックス内で捕まったモーフィアスを解放する為にNEOと相棒のトリニティは武装して救出に向かうのですが、そこで容赦無く警備員を撃ち殺すシーンがあります。

このシーンを補足すると、殺された警備員の彼らはモーフィアスが捕まっているということも知らず、そもそも自分を銃撃している人物が一体何者なのかもわからないわけです。
撃ち殺された彼らはAIではなく、マトリックス世界で生かされている一般の警備員であり、マトリックスは仮想現実ですが、そこでの死ぬことは現実世界で死ぬことと同じです。
要するに、普段通り警備の仕事をしていたら、ある日突然テロに巻き込まれた被害者なのです。
にも関わらず、NEOやトリニティが彼らを殺す前の葛藤も何も描かれておらず、「当たり前」のように殺していて、そこに怖さを感じました。
そもそもこの時点ではNEOとトニリティに指示を出しているモーフィアスの行動原理となっている「預言者」という存在でさえ、信じられるという確固たる証拠はありません。
預言者を盲信するモーフィアス、そのモーフィアスの指示通りに行動するNEOやトリニティ。
これは、宗教を盲信する過激派のテロと同じ思想に見えませんか?
主人公たちの行動よりも、彼らの選択に「そりゃそういう状況だったらそうするだろうな」と納得してしまう自分自身が特に怖いと思いました。
まぁしかし革命の為の手段が「テロ」というのは何もこの映画に限った話ではないのですが・・・
エージェントスミス(マトリックスの管理者)

マトリックス内で主人公たちが主に戦っている相手。マトリックスに侵入してくる人間などの「不正なプログラム」を排除する役割。マトリックス側から見ると秩序を保つ存在です。
とにかくマトリックス内の不正なプログラムであるNEOたちを攻撃してきます。彼らはマトリックス内の他の人間を乗っ取ることができ(例えるなら不正ログインのようなイメージ)、自分たちが管理しているマトリックス内を自由に行き来することができます。
当初のスミスの役割は「マトリックス内の管理」だったものの、一度NEOに破れて以降、マトリックスはエージェントを一掃して新しいエージェントを生み出そうとします。ところがスミスは自分が削除されることを拒否して「エグザイル」となります。(故障やバージョアップで不要となり、本来削除されるべき存在にも関わらず仮想世界に留まる不正プログラムの総称)
エグザイルとなった後のスミスは、更にパワーアップして執拗にNEOに襲いかかります。機械側からするとスミス自身が「不正プログラム(=NEOたち)を排除して外の世界に出たい」という目的を達成しようとバグ化したとも言えます。
アーキテクト(マトリックスの設計者)

マトリックスを作ったプログラム。アーキテクト曰くマトリックスは以前に5回のバージョンアップをしたそうです。プログラムであるアーキテクトが設計した初期の「マトリックス」はまさに理想郷とも言える完璧な世界だったのですが、人間の不完全さからかなり早く崩壊したそうです。常に完璧な答えを導き出そうとする彼らプログラムにとっては人間の持つ不完全さや感情が理解しにくいのです。
2度目のマトリックスでは敢えて無秩序やグロテスクな不合理さを導入するも失敗。
そこで3度目のマトリックスから「預言者」という不確定要素を導入し、選択肢を与えるプログラムを導入したことによりシステムが安定しました。
預言者の導入により99%がマトリックスを受け入れたものの、その中で必然的に発生する1%のアノマリー(=目覚めた人々)は、放置しておけばシステムに重大な影響を及ぼす存在になり得るそうです。
映画「マトリックス」の世界では、目覚めた人々(アノマリー)は「ザイオン」と呼ばれる人類唯一の都市に住んでいて機械を相手に闘っている抵抗勢力なのですが、そのザイオンの存在でさえ機械側は織り込み済みなのです。
NEO(アノマリーの統合体)

マトリックスの仕様上、必然的に生まれたアノマリーは、一定以上蓄積すると特殊な計算式により統合体となります。マトリックスはこの統合体であるアノマリー(救世主)を参考にしてマトリックスをバージョンアップします。
要するに、全人類が希望を託す「救世主」すらもシステムの一部なのです。なかなか希望の無い話ですね 笑
NEOはアキーテクトから選択を迫られます。

1つ目の選択肢は、マトリックスに取り込まれることにより人類が助かる道(=マトリックスシステムのバージョンアップする道。ザイオンは破壊されるが、新たにマトリックス内からメス16体、オス7体を選び出し、ザイオンを新しく建設する)。
2つ目の選択肢は、今まさにエージェントと闘っている彼女(=トリ二ティ)を救う道であり、この場合結果的に全人類は滅亡することに繋がります。
ちなみに、過去5人の救世主はいずれも前者を選択しています。仮にNEOが人類滅亡の道を選択したところで、人間を電池として利用している機械たちは規模こそ縮小するものの、滅びることは無いそうです。
まぁお分かりの通り、NEOは彼女を救うことを選択するわけなんですが、個人的にアメリカ映画でよくある「全人類よりも大切な人を救う主人公」というのがあまり好きじゃないんですよね 笑
そして結果的に全て丸く収まるというのが特に。「個人的な感情と人類を天秤にかけるなや!」と 笑。まぁ、人類が助かる道を選んだとしても今いるNEOを含めたアノマリーたちはマトリックスに取り込まれるので死ぬのと変わらないと言えば変わらないんですけど。
オチとしては、最終的に暴走したエージェントスミスがシステム崩壊に繋がるということで、マシンシティのデウス・エクス・マキナ(仮想世界のマトリックスを含めて、現実世界における地上の支配者)と「スミスを倒す代わりに人間に手を出すな」という手打ちの約束(=第3の選択肢)をしてハッピーエンドという感じです。
要するに恋人も救えて、人類も救えてめでたし、めでたしという 笑
全体的な感想
映画としては全然良い話では無いです。それどころか真面目に考えれば考えるほどえげつないですが、部分的に現実世界に照らし合わせると色々と考える余地があって興味深いです。
陰謀論が好きな僕の場合だと、マトリックスを含む機械側を「西洋文明(資本主義社会)」、NEOたちの抵抗勢力を「過激派の宗教」、マトリックスに住む人々を「日本人」として見ると何とも言えない気分になりました 笑
映画としては1999年の作品なので古い作品なのですが、今見ても全く古臭さがありませんし、何も知らない人に「最近公開された作品」と言っても信じられるレベルです。
それもこれもCGを駆使した映像は勿論、主な舞台は仮想現実なのですが、その仮想現実は普段私たちが生活しているものと同じなので、たとえばスターウォーズに出てくるような車が飛んでたり奇怪な生物がいるわけではないので違和感が全くありません。逆に機械が支配する現実世界は全然違いますが 笑
個人的には、アクションシーンよりもストーリー展開に興味があったのでそういう意味ではアクションシーン少なめの一作目「マトリックス」が一番面白かったです。「リローデッド」はアクションシーン多めでちょっとしんどく、「レボリューションズ」は現実世界が主な舞台で、そこで大規模な戦闘が繰り広げられるのですが、機械の戦闘シーンの良さがわからない僕にはめちゃくちゃしんどかったです 笑
とはいえ、三部作なのでストーリー的には結局全部観る必要があるんですけど 笑
—-追記—
「アクションシーンが少なめの方が良い」と言ったものの、最近Netflixで「鉄拳とジャンプキック -カンフー映画の舞台裏-」という作品を観たのですが、カンフー映画的な視点では、この映画にカンフーが取り入れられたことは凄く意味のあることだと理解しました。
とはいえ、面白さには何の影響も無いけど。
—-ここまで—
まぁなんにせよ、「そのうち忘れた頃にもう一度観るんだろうなぁ」という良い映画でした。
おまけ:この世界は仮想現実だった?
マトリックスの話のついでに「シュミレーション仮説」というものを紹介しようと思います。
シュミレーション仮説とは「私たちのいる現実(宇宙)はコンピューターのシュミレーション世界の中だった」というものです。
まぁ僕自身が理解しきれていないので、その根拠となることだけを簡単に紹介すると
- コンピューターの処理能力の向上
- 宇宙の構成要素が何者かが設計したとしか思えないほど絶妙
- 地球上に生命が誕生する確率が奇跡的な確率
- 科学的に解明することが困難な問題(観測者問題など)が幾つも見つかっている
- 幽霊を目撃する人々や前世の記憶を持つ人々は一種のバグではないのか?
- 自然選択説には無理があり、人類の進化に何者かが関与しているとしか思えない
- 人間の脳は最先端の精密機械よりも緻密に形成されている
- 確率的にシュミレーションされている可能性が高い
などなど。たとえばハーバード・スミソニアン天体物理学センターの宇宙シュミレーターはたった3ヶ月で宇宙130億年の歴史をシュミレートすることに成功したそうです。しかもこれは2014年の話です。
そしてNASAのある専門家の話では10年以内に人生80年分をシミュレート可能なコンピューターが開発されると予測しており、それは人間の一生の思考すべてをシミュレートできるそうなのです。要するに、私たちの世界でも、現実に似た世界をシュミレートできる可能性を示唆しています。
仮に私たちが何者かによって作られた現実と同じシュミレーションの中にいるとします。現実と同じわけですからシュミレーションの中でシュミレーションを作る可能性があるわけですし、私たちを作った設計者は、私たちが生きている仮想現実だけでなくたくさんのシュミレーションが作られている可能性があります。
そう考えるとむしろ「私たちの住む世界が仮想現実でない」事を証明するのは限りなく不可能になります。まぁ悪魔の証明のようなもので考えても意味が無いとも言えるのですが、単純に興味深いですよね。
多元宇宙論みたいな壮大な話ですが「設計者(=神)」がいるかいないの違いなのでしょうか?もうよくわかりません 笑
ともかくこのシュミレーション仮説ですが、トンデモ話というわけではなく、なんとあのイーロン・マスクまで支持しています。
まぁ勿論シュミレーション仮説に異論を唱える人もいますが・・・。いずれにせよ、ここまで規模の大きい話をしていると日々の自分の悩みが物凄く小さく感じますよね 笑
あと、シュミレーション仮説では無いですが宇宙関連の本では下記の本が個人的にめちゃくちゃ面白かったです。そのうち書評も書きたいのですが、難しすぎて何度も読み返しててなかなか書けていません(読んでる最中はなるほどー!と思ってる筈なのですが 笑)
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